我が闘病記
第6章 馬尾神経腫瘍、そして手術
結局、彼の手術は深夜の12時までの11時間を要し無事終わりました。
骨を削って代用椎間板を調製するのに予想外に時間がかかっただけで手術自体は成
功したと聞いて大部屋の仲間達もほっとしていました。
しかし、術後身動きもできないまま痛がる彼の姿を見るにつけ、いずれは自分もそんな
姿になると思うと人事ではありませんでした。
人間ドックのように、あらゆる角度から2週間かけて術前検査が実施された結果、手術
に問題無いことが判明し、手術日と手術法が決まりました。
あお向けの状態で、上から2番目の腰椎の位置の背中にタテにメスを入れて切り開き
、腰椎にドリルで硬膜が見えるようになるまで穴を開け、その硬膜にメスを脳脊髄液が
出来るだけ零れないようにしながら馬尾神経を露出し、その中から腫瘍が発生してい
る神経を顕微鏡眼鏡を通して見付けだしてから細心の注意を払って腫瘍の前後を隣接
する神経を傷つけないようにしながら切断して摘出する方法を採るとのことで,所要時間
は7時間程度とのことでした。
切断された神経は繋ぐことは出来ず、そのままの状態にしておきます。
この神経は永久に切断されたままですので、この神経が支配していた身体部位には
当然痺れ等の後遺症は免れません。
そして、いよいよ入院してから2週間後に手術の日がやってきました。
その4人の中では私が3番目でした。同部屋の人達に励まされながらオペ室に移動ベッドで運ばれていきました。7時間に及んだ手術が無事終了し、個室のベッド上で目が覚めました。
背中のメス跡の痛みとオチンチンにパイプが挿入されていることの違和感はさして苦痛
ではなかったのですが、1週間は寝返りをうてない仰向けの
状態を保持せねばならない、いわゆる「ベッド上安静」が実に辛かったのです。
90度身体を曲げることは許されているのですが、その場合はナースコールして看護婦
のアシストが要るのです。
身体を大きく動かすと、オペで破った膜の縫合部から脳脊髄液が漏れて再手術という
重大事態になるので、「ベッド上安静」は絶対に守らねばならない条件で、この点が椎
間板ヘルニアの場合との決定的な差だったのです。
更に1週間も身体を動かさないため腹筋が極端に弱くなり削った骨をバックアップ出
来ないので起きようとすると激痛が走り一人で食事が出来ない上小便もパイプを通し
て垂れ流し、お尻にはおむつが付けられていたのです。
点滴から流動食が始まりそろそろ便意をもようしてきたらどうしようと思うとお先真っ暗
になり、大の男が看護婦さんにオチンチンは触られるは、おむつは交換されることにな
ったらどうしようとそればかりを思い悩んでいました。
いずれ三日後には再び大部屋に戻ることになります。
大部屋のベッド上で排便すると臭気で周りに迷惑をかけるのではと思い、婿殿のコネ
で婦長に頼み込んでそのまま個室に居残ることにしました。
しかし、このことがちょっとした波紋を投げ掛けることになったのです。