浮気について考える(第1回)
(愛人と恋人、浮気と不倫)

先日トリの雌の浮気を採り上げてみましたが、今度は人間の浮気について考えてみたいと思います。今日は、その第1回として、浮気と不倫の違いについて考えてみたいと思います。浮気と不倫は愛人と恋人に一脈通ずると思います。江戸時代までは日本には、愛する=LOVEと言う概念は無く、好む=LIKEと言う概念しかなかったところへ、明治になってからLOVEと言う概念が西欧から伝わってきたため日本人は面食らったと言われております。そこで、好きになれば愛が有ろうが無かろうが「愛人」としていたようです。

ところが、戦後になって、それまでは恋人や配偶者を含めた総称として曖昧に使われていた「愛人」と言う言葉が、「恋人」と言う言葉と区別して使われるようになりました。そのきっかけは中国建国の父、毛沢東主席が妻の他に多くの愛人を持ったことにあると言われております。毛沢東は生涯で、楊開慧、賀子珍、江 青と3回結婚しておりますが、生来の女好きが高じて妻以外に多くの女性をセックスパートナーとしております。そして、その彼女たちが「愛人」と呼ばれるようになりました。

そのことが、日本に伝わって、精神的なよりどころのない関係にある人を愛人、関係ある人を恋人と分けて呼ぶようになったとされ国語辞典にもそのように記載されております。因みに手元にある「岩波・国語辞典第三版:」では「愛人」を次のように説明しております。

「第二次大戦後、新聞等で「情婦」「情夫」を避けてこの語を使い、「恋人ではなく愛人のようだ」との表現も生じた」この説明は毛沢東の愛人がきっかけになったことを暗に認めているように思われます。また「だれかれにかたよらずに人を愛すること」の意味も有るとしております。早い話、不特定多数を相手にすることになり、その意味ではズバリ浮気相手を指すことになります。

一方、「不倫」については上記の国語辞典では「人が踏み行うべき道から外れること」としております。つまり男女関係だけでなく、例えば万引きなどの犯罪行為も不倫をすることになり、ピンときません。しかし法律的には「不倫」は「不貞行為」と定義され、不貞行為とは「配偶者のある人が、自由意思で配偶者以外の異性と肉体関係をもつこと」と定義し、民法770条1項1号から推測される「夫婦は相互に貞操義務有り」の貞操義務違反に当たるとされております。

従って、この点では多くの場合浮気も不倫も同罪となりますが、浮気は不特定多数を相手にするのに対して不倫は特定の人を対象とし、浮気は愛人関係であるのに対して不倫は恋人関係にあり、かつ浮気は精神的なよりどころが無いのに対して不倫は精神的なよりどころが有ると定義すると、その不貞行為の奥深さと言う点では不倫は較べものにならないくらい深く罪深いものになると思います。「不倫の恋」と言う言葉は有っても「浮気の恋」と言う言葉が使われないのはこの事情を物語っているように思います。


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