雑感記

第 4 章 養殖の魚介類について一考

私は遠洋漁業基地として有名な静岡県焼津市で生まれ育った関係で、 魚が大好きで今で釣りに出ては新鮮なお魚を頂いております。 従ってお魚と言えば天然物が当たり前と思っていたら、実はスーパー 等で高級魚として買うお魚の大半が養殖物と判り愕然としました。

ハマチ(鰤の幼魚)、真鯛、平目、ふぐ、鰻、車えび等が代表的な養殖物で すがハマチ、真鯛と平目を除くと素人では殆ど天然物と姿、味ともに区別出来ません。 天然真鯛はきれいな赤い体色、養殖真鯛は赤黒い体色と狭いネットの 中を泳いでいる時、ネットに当たって出来た鼻先や尾びれの傷跡で、 また天然ひらめは腹側が白いのに対して養殖ひらめは黒色が相当混じ ってますので素人でも外観で識別出来ると思います。

養殖するにはかなりのコストがかかりますのである程度市場価額が高い 魚でないと養殖する意味が有りません。 従って鰯、鯖、鯵などの魚ではなく、上に述べたような高級魚が養殖の対象 になります。 鮪、鰹等の高級魚の養殖物が少ないのは、これらの魚は高速で海水中を泳ぐ ことでエラから空気を取り込むので、養殖するには広大な囲いネットが必要な上、 ネットに当たって傷が出来ても化膿して死なないようにする技術が必要なため、 まだ本格的には行われていないからです。

ハマチや真鯛の養殖にも同じような問題がありますがそれ程深刻ではないため 技術的に解決され今やその90%以上が養殖物で占められる程になっております。 養殖中の魚は狭い囲いの中で運動不足気味の上、同じようなエサばか り食べておりますので身が締まってないのに対して天然物は 海流にもまれて身体を動かしているため引き締まっております。 たしかにハマチ、真鯛、平目では引き締まっていないことは食感で判りますが価額が 天然より大幅に安い分、割り引いて考えればいいと思います。 逆に私は鰻や車海老などは養殖の方が美味しいとさえ思っております。

養殖の真鯛はネットで囲われた海中で養殖されますが、牡蛎殻類 がネットに付着成長するに従い、ネットの網目が細かくなるので、 ネット内外での海水の入れ替わりが不充分となり、ネット内の海水 中の溶存酸素が低下して養殖真鯛は窒息死してしまいます。 そこでネットに船底塗料と同類の有機金属のトリブチル錫等を塗ると、 蠣殻類等はこれを嫌うため付着量は大幅に減り窒息すろ恐れは軽減します。
ただ、問題なのはこれらの薬品類が海水に溶けて、エサの中に入り込むのでので真鯛がこれを食べると身体に吸収、蓄積される 恐れが有ると言われております。

しかし、トリブチル錫等の海水への溶け込みは養殖ネットからよりも 航行する船舶の船底塗料からの方がはるかに量的には多いはずで すので養殖ネットだけを問題にするのも意味が無いように思われます。 それに、人体に影響が有るとの実証データが有るわけでも有りません し、養殖技術も年々改善されていると思いますので、養殖物を直ちに危険視するのは早計のように思います。 ただ、養殖にはこのような問題点が有ると言う事実だけは知って置く必要が有ると思います。

そこで、最近問題になっている環境ホルモンとこのトリブチル錫の関係について触れておきたいと思います。 ある種の薬品は女性ホルモンや、男性ホルモンに分子構造が似ているので、 これらを体の中に取り込むための受け皿が本物のホルモンと錯覚して誤って体に取り 込んでしまうのです。 すると、性ホルモンのバランスが崩れ、オスのメス化やまたその逆が起こる恐れがで てくるのです。 このような薬品のことを環境ホルモンと呼んでおります。 性ホルモンのバランスが崩れると、メスでは性成熟の遅れ、生殖可能齢の短縮、妊娠維持困難・流産などが見出さ れ、オスでは精巣萎縮、精子減少、性行動の異常等との関連が報告されています。 米国フロリダ州のアポプカ湖の近隣の農薬工場で殺虫剤のDDTを含む薬品が大量に 流出し、翌年以降、ワニの数が90%も激減したと報告されております。 いつぞや、日本の若い男性の精子の数や活性が低下しているのではとの報道が有りましたが、 統計学的にはそのように断定する根拠は無いように思われます。 このトリブチル錫は以前から環境ホルモンとして作用する恐れが有る と言われ、世界全体での規制強化が叫ばれておりますが、まだ代替 するものがなかなか見つからず規制は難しいようです。

ある研究機関で、イボニシなどの貝がこのトリブチル錫によりメスの オス化による繁殖低減が確認されてたとして、追跡調査を実施してお りますが結論はまだ出ていないようです。 他の環境ホルモンとして、ダイオキシン、カップ麺容器のポリスチレン、 食器のポリカーボネート、壁材や歯科用の接着剤のエポキシ樹脂の ビスフェノールA等が指摘されておりますが、いずれも立証されたわけ ではなく、マスコミの過大報道の傾向もありますので直ぐに心配する 必要は無いと私は思っております。

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