雑感記 第19章 アフガニスタンとタリバン

ジハードは成功し、92年には最後の共産党政権、ナジブラ政権を打倒し アフガニスタンから共産主義を追放し、ムジャヒディンたちはカブールに 入城して、大統領がイスラム協会のリーダー、ブルハヌディン・ラバニ氏、 首相がイスラム党リーダーのヘクマティアル氏、軍事司令官がイスラム協会のマスード将軍からなる連立政権が発足して世界中から期待を集めましたが、 シーア派とスンニ派、民族間の対立により失脚し、国内は内戦状態になり、 山賊と化したムジャヒディンが暴行・略奪を繰り返し、法外な通行税をとって 私腹を肥やす事態になってしまいました。

この事態に立ち上がったのが、ムラー・オマル現タリバン最高指導者で、 94年に彼は自分の弟子たち30人にわずか16丁の自動小銃を持たせ、ムジャヒ ディンの基地を襲撃させ駆逐することに成功し、これを契機に各地の軍閥たちを 倒して勢力を伸ばし、97年9月首都カブールを制圧し現在ではアフガニスタンの 90%以上を実質支配するに至っております。。

「タリバン」とはイスラム神学生「タリブ」の複数形のことで、彼らのほとんどはジ ハードのときにパキスタンに逃れた難民やその子供たちで、パシュトゥン人で構 成され、その名の通り、マドラサ(イスラムの学校)の生徒たちです。

その後、ヘクマティアル氏等の率いる反タリバン抗争が起こったものの敗退し、一時 は険悪の仲だったラバニ氏やマスード将軍が指揮する「北部同盟」の元に集まり、この 少数精鋭の北部同盟だけが、唯一タリバンに抵抗しているグループですがその 支配地域はアフガニスタン全土の5〜10%に過ぎず、同時テロが起こる数日前 に暗殺されたのが気になります。

現在、タリバンを支持しているのはパキスタン、サウジアラビア、北部同盟を支持 しているのがタジキスタン、ウズベクスタン、インド、イランですが、米国はパキス タン、サウジアラビアに支持しないよう要請しております。

イスラム原理主義は政教一致でイスラム法を政治に反映させることを主張しており、 一つの宗教として存在し得ると思いますが、それを唯一正当なものとしてそれ以外の宗教、組織、仕組み、団体、国家を否定して抹殺しようとする過激思想は、危険そのもので米国だけでなく全人類に対するテロに 繋がるだけに、今後の米国の報復はやむを得ないように思われます。

タリバン政権は選挙によらない暫定的な政権であるため国連でのアフガニスタンの代表権は持っておりません。
北部同盟のラバニ大統領が代表権を持っております。
このタリバンはイスラム原理主義の下、偶像禁止の信念に反するとして、バーミ ヤンの仏像遺跡など数々の世界的遺産を破壊したり、女性は男を誘惑して信仰を妨げるとの理由でその存在を否定して教育を受けること、就職すること、場合によっては外出することさえ禁止したり、ケシの栽培を奨励して麻薬を密造・輸出したり、その販売にマフィアを利用したり、微罪でも見せしめのため男性だけに公開して処刑したり、スポー ツ、踊り、音楽、インターネット、凧揚げを禁止したりして世界中から非難されております。 特に女性に対する差別政策への抗議はヒラリー夫人等の活動で有名ですが、同じイスラム国家のイラン等からも出ております。

更にルクソール観光客殺害事件、日本人鉱山技師拉致事件 、世界貿易センタービル 爆破事件等のテロに加担したとされるビン・ラディン氏を匿っていることで国際的に批判を浴 びていることはご存じのことと思います。

現在、パキスタンがタリバンとビン・ラディン氏の身柄を期限付きで引き渡すよう折衝中ですが、もしこれにタリバン が応ずれば、タリバン最高指導者ムラー・オマル師のカリスマ的な存在感が失墜し、北部同盟等の国内反対勢力に再蜂起の 機会を与えることになりますのでまずあり得ないと思われます。
また、パキスタンのムシャラフ政権は2年前にクーデターで出来た政権で地盤が弱く、インドとカシミール問題で対立し、かつ原爆を保有している事情も有るので米国の同国への対応は慎重さが求められます。

一方、米国としてはアフガニスタンでビン・ラディン氏やその組織を追い求めてアフガニスタンで掃討作戦を展開しても 失敗に終わる可能性が強いので、最近は掃討対象を、支援する組織・国家に広げる発言が目立ってきております。

イラン、シリアの反米エネルギーがやや後退した反面、経済封鎖、飛行禁止、査察が思うように進展せず逆に中東での発言力が増しつつあるイラクのフセイン大統領が「敵は本能寺」的存在のように思われてなりません。

テロ後初のNY株式市場は急落したものの暴落には至らず、もし
ビン・ラディン氏が風説どおりテロの前に空売り(株価が下がるとその分利益が出る先物取引)していたとすれば期日までに何とか株価をテロ前のレベルに戻してその野望を絶って欲しいもので、これも米国を先頭に全世界の戦いのひとつと思います。

いずれにせよ、事態の一刻も早い解決を切に祈ります。


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