講座集 第2章 資源回収・リサイクルに役立つプラスチックスの知識

(7)プラスチックスの代表選手ポリエチレン

塩ビに次いでみなさんにお馴染みのポリエチレンが昭和30年に入って実用化されました。
当初は塩ビの消費量がトップでしたが、前節で述べた塩ビの問題点がクローズアップされてから消費量が減りだし 現在はポリエチレンがトップになっております。
この樹脂は元々戦略目的で英国最大の化学会社ICI社によって第二次世界大戦中に開発されました。
当時、大西洋はナチスドイツの潜水艦Uボートに制海権を握られ連合国側の輸送船団が潜水艦からの魚雷攻撃で撃沈されると言う深刻な事態に陥っており、海中の潜水艦を空からキャッチして爆雷攻撃することが急務 とされておりました。

ところが、当時のレーダーの性能が悪く潜水艦の居場所を明確にキャッチ出来なかったのです。 レーダーは微弱な電波を捉えて信号電流に変えるのですが電流の周波数が高いため電気絶縁体の誘電損失が多くなることがその性能低下の原因でした。

そこで、誘電損失が小さいポリエチレンをその絶縁体に使用することでレーダーの性能は飛躍的に向上し、その結果 ドイツ潜水艦は連合国側の対潜哨機の爆雷攻撃の標的になり徐々に制海権を失い敗戦への道を辿る要因のひとつ になってしまいました。

この成果を高く評価した米国はルーズベルト大統領とチャーチル首相との洋上会談を通してこのポリエチレンの製造実施権を英国側から譲り受けて国内生産し、日本軍に対しても高性能レーダーを使用してから戦局は一気に連合国側に有利展開するようになったのです。

そして、その戦局は原子爆弾によって終止符が打たれたのですが、その原子爆弾製造にフッ素樹脂が大きく貢献したのですがこれは後で触れることにします。

(8)間違った呼び方第2号「ポリ袋」

ポリエチレンの用途の半分以上が実はフィルムなんです。
従って日常見かけるフィルムや袋類は100%近くポリエチレンと思って頂いて結構です。
ポリエチレンはインフレーション成型法と言って溶融状態の樹脂をリング状の口金から 押し出して得られる円筒状の半溶融状態の膜の内側から空気を送り込んで膨らまし (インフレ)てから冷却してロールに巻き取る両端が閉じられたと薄い二重のフィルムができますので、これを更に 加工してカットし印刷やラミネート加工して主にゴミ袋、包装袋、買い物袋などの袋製品にします。

そのため「ポリ袋」と言う言葉が使われるようになりました。
この言葉はポリエチレンと後で述べるポリプロピレンで作られた袋の意味で、塩化ビニールで作られた袋「ビニール袋」はとは異なる製品ですので、「ビニール袋」やこれを含めて「ポリ袋」と呼ぶと間違った呼び方になります。

ポリエチレンには高圧法で重合された低密度の軟質品と低圧法で重合された高密度の硬質品の2種類が有ります。 軟質品は殆どがフィルムでスーパーやコンビニで商品の包装に使われるレジ袋、ゴミの収集に使われるゴミ袋、 ハウス栽培に使われる農業用等に利用され半透明で軟らかい特徴を持っております。 軟質品はこの写真 に見られるようにその柔らかさを利用して後で出てくるポリプロピレン製の箱の蓋として利用されております。

硬質品はバケツ、お風呂の台座、野球場のシート、食器等に巾広く利用されております。

また以前、レコード盤を包むのに使われたゴワゴワした半透明の腰の強いフィルムがこの硬質品です。


     
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